こんにちは。今回はアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」における悪い意味で有名なエピソードである「エンドレスエイト」について、実際に視聴した上で評価してみたいと思います!
アニメ業界に語り継がれる失敗?となってしまった本エピソードですが、しっかり評価することで見えてくる物があるかもしれません。
なお、今回は作品の世界観、設定についての細かい説明は省かせていただきます。雑に説明するとしたらこんな感じ。
女子高生の「涼宮ハルヒ」が、宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶことを目的に設立した「SOS団」のメンバーを中心とした青春SFです。


- 「エンドレスエイト」とは?
- 「エンドレスエイト」が作品に与えた影響
- 商業的、教養的観点から「エンドレスエイト」について議論してみる
1.「エンドレスエイト」とは?


「エンドレスエイト」についての簡単な説明
「エンドレスエイト」は、涼宮ハルヒシリーズ(小説)の第5巻、「涼宮ハルヒの暴走」に収録されている短編ストーリーです。TVアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱(2009年度版)」の12話から19話に当たる部分になります。
SF作品においては有名な「ループもの」を題材にしたエピソードです。
また、このエピソードは劇場版「涼宮ハルヒの消失」へのマッチポンプ的エピソードになっています。
「エンドレスエイト」のあらすじ
ざっくり言ってしまうと、「夏休みが繰り返されてしまう」というエピソードです。自力でいちいち説明するのはしんどいので、ニコニコ大百科のあらすじをそのまま載せます。(リンク)
夏合宿から帰ってきた後、キョンはしばらくハルヒ他SOS団メンバーと会うこともなく、平和な夏休みを過ごしていた。しかし夏休みも後半に差し掛かった頃、突然ハルヒから集合命令の電話。SOS団のメンバーに「夏休みを全力で遊ぶ!」と宣言。プール、盆踊り、花火大会、バイト、天体観測、バッティング練習、昆虫採取、肝試し…明日以降の超過密スケジュールを発表する。準備を始めるSOS団だったが、キョンはずっと謎の既視感と違和感に悩まされる。そんな中、長門が疲れているように見えたキョンは長門に声をかけたのだが、本音を話すことなくそのまま別れる。
そんなある日の深夜、キョンの携帯にみくるから連絡が来る。みくるの隣には古泉がいるようで、さらにみくるは泣きじゃくっていた。自転車を飛ばし、駅前に向かうキョン。そこにはハルヒ以外のSOS団メンバーが集まっていた。みくるや長門がキョンに伝える。
「夏休みが終わらない」
キョンたちはそこで、自分たちが今まで15000回以上ループを繰り返していること、各ループが終わる毎に記憶がリセットされていることを知る。
このエピソード、あらすじを見ただけでは問題があるようには到底見えません。ここまでならベタなSFを踏襲した普通に面白そうなエピソードです。
しかし、その見せ方に問題がありました。
制作陣(京都アニメーション・角川書店)はこの「エンドレスエイト」を、あろうことか8週連続で、殆ど同じストーリーのまま放送したのです。
内訳としては、1話目:ループに気づかないまま。2~7話目:ループに気づくも脱出できずループを繰り返す。8話目:ループ脱出 という流れです。
もちろん作画やCVを使い回して手抜きをしているわけではなく、その表現手法についても各話毎で多少の違いがあります。
登場人物たちの水着や浴衣のデザインは毎話変わっていますし、語り部役兼主人公のキョン(CV.杉田智和)のアドリブによって若干の差別化が図られています。また、シーン毎の演出は毎話異なっています。(例:ある話数では花火の際に楽しげな演出をしているが、別な話数では少し退屈そうな演出になっている、等)
2.「エンドレスエイト」が作品に与えた影響


このような「エンドレスエイト」の表現手法は、放送終了後に賛否含めて大きな議論を巻き起こしました。加えて、実際のBDの売り上げにも影響が出ました。
エンドレスエイトが収録された以降の巻の売り上げがそれ以前の売り上げ枚数の半分近くまで減少したのです。
○涼宮ハルヒの憂鬱 (2006年版)
巻数 初動 2週計 累計
00巻 28,729 33,892 35,176
01巻 30,927 34,529 36,095
02巻 34,054 38,838 41,856
03巻 32,017 39,169 41,260
04巻 34,205 38,789 40,343
05巻 33,618 37,392 38,457
06巻 31,859 **,*** 43,079
07巻 38,728 43,360 44,899
○涼宮ハルヒの憂鬱(新アニメーション)(2009年版)
巻数 初動 2週計 累計 発売日
01巻 21,812 25,397 39,408 09.08.28
02巻 14,104 17,739 19,145 09.09.25
03巻 12,708 15,682 16,216 09.10.30
04巻 12,278 14,743 15,438 09.11.27
05巻 11,965 **,*** 15,673 09.12.25
06巻 12,778 14,735 15,648 10.01.29
07巻 12,320 14,500 14,991 10.02.26
08巻 12,563 14,765 15,269 10.03.26
wiki より一部抜粋
問題のエンドレスエイトは、2009年版のBD2~5巻に収録されていますが、それ以降の巻もエンドレスエイト収録以前の売り上げ枚数の約半分となっており、エンドレスエイトの影響の凄まじさを物語っています。
原作エピソードのストックがあるにもかかわらず続編のアニメ化がされていないのも「エンドレスエイト」のせいかもしれません。
普通に考えて、似たようなエピソードが収録され続けているBDは買わないですよね。
3.教育的観点から「エンドレスエイト」について議論してみる
この段落を書くに当たって、部分的に参考にさせていただいた書籍→エンドレスエイトの驚愕: ハルヒ@人間原理を考える
この本、著者が東大の哲学教授だとか。驚きですね。
本やネットで行われてきた議論を見てきた上での私個人の意見としては、「エンドレスエイト」というエピソードをTVシリーズで8話かけて放映したのは大間違いだろうという感じです。。
しかしこのエピソードを全部通しで見ることで得られるものは確かにありました。私が興味深いと思った点をポイント別にまとめると、
1.繰り返す日常の中でも微妙な変化は起こっている
エンドレスエイトで繰り返されるエピソードは、大筋は共通ですが、各話の演出には微細な変化が生じているほか、登場人物が感じているであろう感情も、各ループで若干異なっているように思います。同じ出来事でも、あるときは心から楽しんでいたり、別なループの際には寂しそうだったり退屈そうだったりといったように。


2.ループを記憶(記録)する登場人物(長門)の立場に立つことができる
登場人物の一人である長門有希は、ほかの登場人物と違い、各ループ毎に記憶がリセットされません。エンドレスエイトの8話という長さは、記憶が残されたままループを繰り返している彼女の視点(虚しさ、退屈)を追体験することができるという意味で、教育的な価値があるような気がしました。


まとめ
京アニが「エンドレスエイト」をこのような構成で放送したことについては、ビジネスの側面から見たら大失敗だったとはおもいます。しかし、既存のアニメにはなかった斬新な演出構成を行ったという側面からはある程度評価することが可能かと思います。
でもやっぱり8話は長すぎる!っていうのも正直な気持ちです。
まあ色々書いてきてアレですが、毎話毎話違う構図で長門さんの表情を描写してくれるだけで私は満足です笑
ではでは~